番外編:条件付き制約


唐突な夏美の疑問に対する秋菜の回答



「そう言えば秋菜さん、秋菜さんの制約は私や春菜さんのものと違いますよね?」
 夏美は秋菜に唐突に尋ねた。その質問に、宿題に取りかかっていた秋菜は鉛筆を置く。そして先程まで机に向かって本を読んでいた夏美に視線を投げた。
「正確には、夏美と春菜のも違うんだけど。うん、そうだよね……」
 椅子ごと夏美の方向へ体を動かした秋菜は、少し考える仕草をした。
「私と春菜さんは違うのですか?」
 納得がいかないらしい夏美の声に秋菜は頷く。そして、今は部屋にいないルームメートの事を考えなら口を開いた。
「春菜や竹中の制約は、いつでもどこでも発動しちゃうのに対して、夏美の制約は「本を読む」って行動をした時に発動するから」
「私の制約は無条件という訳ではなかったのですね」
 秋菜の解説に、夏美は内心関心した。秋菜ならではの洞察力が発揮されている。
「そうね。何かの行動が引き金になっているのが夏美で、春菜は本当に唐突だから」
「それで秋菜さんはどうなのですか?」
 夏美は春菜と自分の制約ではなく、秋菜の制約が知りたいのだ。と、それをアピールするように口をはさんだ。
「……一言で言うなら、リンゴを食べ忘れると動けなくなるの」
 小さなため息と共に吐き出された言葉に、夏美は首をかしげた。
「動けなくなる、というと、ダルい感覚ですか? 風邪をひいたときのような」
「ううん、ピクリとも動かなくなるの。自分の意思と体の関わりが、ぷっつり切れる感じ。動かない自分の体を眺める感覚は不思議よ?」

 何とはなしに状況を説明する秋菜に、夏美は疑問点をぶつけた。
「それは、そうならないとわからないですよね?」
「夏美も最初にここに来たとき、保険の先生にの検診受けなかった?」
 夏美の疑問に質問で秋菜は返す。それに夏美は頷いた。
「はい、ありました。普通の検診以外にも何かあったのですか?」
 夏美の言葉に、秋菜は頷いた。
「あの検診の最中に同時進行で調べるみたい。私は検診の後に言われたから」
 ほう、と納得した表情を見せる夏美に、秋菜は苦笑を漏らした。
「私はまだまし、だけどね」
「? 何か言いました?」
「ううん、何でもない」

 秋菜はふるりと首を緩くふると、視線を机に戻す。夏美はなおも何か言いかけるが、結局口は開かれなかった。
 秋菜は友人の事を思い浮かべながら、彼女の苦労を思い浮かべ、謹慎室から出てきた時の事を考えて内心げんなりとした。出てきてすんなりと受け入れるような魂ではないし、なにより春菜も黙っていないだろう。
 頬杖をつきながら考えを巡らせつつ、秋菜は宿題の続きを行うために机に体を向けたのだった。



2014.2.2 掲載