番外編:GWの誕生日大作戦後日談


「GWの誕生日大作戦」の後、春菜と和司の帰り道のお話。



「さっちゃん、今日はありがと!」
「清水さん、マジで楽しかったよ。後CDサンキュー」
「あたしも、マンガ借りるね」
「いいえー、急に決めたのに来てくれた小暮くんと梨花にも感謝だよ!」
紗弥香に見送られながら春菜と和司は清水家を後にする。手を振りながら見送る紗弥香に手を振り返す。そして踵を返して歩き始めた。
道すがら特に話をするわけでもなく無言で同じ方向に歩いて行く。その沈黙に耐えられなくなったのか、春菜が唐突に口を開いた。
「それにしても、さっちゃんは何で浦浜の誕生日知ってたの?」
その言葉に前を向いていた和司は一瞬春菜を見、再び視線を前方に向ける。
「あらかた、小暮が連絡したんだろうな」
「律儀だね、小暮くん。……それとも」
「なんだよ?」
「世界の望み、なのかな」
「世界の望み……?」
和司は軽く眉をしかめる。そして怪訝そうな顔を春菜に向けた。
「何だ、それ?」
春菜は和司に聞き返された事に目を見開いた。
「え、浦浜知らなかったの!?」
「知らない。僕が何でも知ってると思うな」
「うそー!絶対知ってるって思ったのに!!」
「期待を裏切って悪かったな」

ぶすり、と口を尖らせる和司。その様子に、春菜は慌てたようにパン、と手を打ち合わせた。
「ごめん、マジごめん。あたしの常識は常識じゃない事があるんだ!」
その言葉に一瞬絶句する和司。けれども、すぐに額に手を当てて息を吐き出した。
「お前がこんな奴だ、って直ぐにでも分かりそうなのにな……」
「さりげなく失礼だな、浦浜。ま、いいけど。」

<いいのか……?>
その春菜の言葉に、和司は懸命にも考えるだけにして、口には別の言葉をのせ、初めの話題に強引ながらも軌道修正した。
「で、世界の望みってなんだよ?」
「そのまま。どの『場』でも、つまりどこの世界にも意思はある。その意思の望み。あたしたちはその世界の意思によって捕らわれていたんだよ。……だから、もしかしたら浦浜にも経験あるかもよ?」
常の子供っぽい表情からは想像出来ないほど大人びた顔つきで小首を傾げる春菜。しかし、その様子にも和司は眉1つ動かさずに口だけ動かした。
「あるかも、な。もしかしたら僕たちがあそこに行った事もそうなのかも知れない」

その後、特にお互いを見る事無く夕暮れの中を歩いた為、2人は全く気がつかなかった。
どちらも『場』に捕らわれていた時の髪色に変化していた事に。
2人の周りを不可思議な空気が取り囲んでいた事に。
そして、近くには神社に続く石段がある事に。

すべてのモノには、意味がある事に。



2013.2.3 掲載