パンドラの箱


大きな荷を持つ旅人が
1つの宿に泊まっていた
主人が荷のことをたずねると
パンドラの箱ですと答えた


パンドラの箱ならば
旅人よ 開けて見せておくれ
箱の形を 大きさを
色を 絵を 装飾を


旅人は一言こう言った
形はない色もないなにもない
それだからパンドラの箱なんだと


パンドラの箱の中身は
絶望 苦しみ 貧しさ
暴力 ねたみ やるせなさ
そして 希望


他にも負のもの、嫌なもの
だけど形は持っていない
全て人のものだから
全て心のものだから


宿を出るとき 旅人は言った
人はみな パンドラの箱を持っている
あなたはそれに気づいていないだけ
主人は何も答えなかった


大きな荷を持つ旅人は
今も道を歩いている
人に気づいてもらうために
人にわかってもらうために


パンドラの箱を心の外に
大きな荷として持ちながら
心にしまう そのときが
いつくるのかと 夢見ながら−

この詩も小学生の時に書いた詩です。物語のような語り口が新鮮だと我ながら思います。結構気に入っています。
見えないものを抱えて歩いているこの旅人はどこにでもいる人々だと思います。ただ、見えないものを見えるようにしていることが旅人の使命であり、宿屋の主人のように少しでも変わってくれる人が現れることを祈っているのでしょう。(2011.9)


好きなものは変わらないですね。
「パンドラの箱」のような物語調の詩も好きなのですが、なかなかいいものが書けないので歯がゆい思いもしてしまいます。(2013.3)